野田秀樹率いるNODA・MAPが、遂に待望の新作公演を上演する。
タイトルは、『フェイクスピア』。そう、シェイクスピアではなく、フェイクスピアである。
野田らしいウィットに富んだ言葉遊びを思わせるタイトルだが、その意味は、現時点では謎に包まれている。しかし、やはりまずは、かのイングランドの劇作家、ウィリアム・シェイクスピアを想起せずにはいられないだろう。
シェイクスピアと野田の関連性と言えば、過去『野田秀樹の十二夜』『野田秀樹のから騒ぎ』『野田秀樹の真夏の夜の夢』や『三代目、りちゃあど』など、シェイクスピアの作品をモチーフ(または潤色)とした数々の戯曲があった。
また前回作『「Q」:A Night At The Kabuki』において『ロミオとジュリエット』の二家間の争いを源平の時代に置き換え、もし2人が生きていたらという着想のもと“2組のロミジュリ”を登場させたことも記憶に新しい。同じ劇作家である野田にとってシェイクスピアが重要な存在であることは既知の通りだが、何故、野田はあらためて演劇の神様とも言えるシェイクスピアの名をタイトルのパーツに据えたのか?
さらに気になるのがタイトル頭の“フェイク(Fake)”だ。
“偽物”、“でたらめな”、“ごまかし”を指す“フェイク”。今やSNSから現実世界にまで蔓延る“フェイク”な「コトバ」。50年近く劇作という仕事に携わり、「コトバ」を生業にしてきた野田が、世界中を“フェイク”が跋扈する時代に、「コトバ」というものに正面から向き合ってみようという思いで新作に挑んでいる。気合が入っている。
そしてもうひとつ気になるのが新作の設定だ。何と“恐山”を舞台に“イタコ”が登場するというのだ。
「恐山のイタコ」に代表されるイタコとは、古くから日本の北東北に存在する巫女職。霊を自らの身体に招き入れ、憑依させ、死者に代わってその意思を語る秘術“口寄せ”の使い手であるイタコが、一体、この『フェイクスピア』でどう機能していくというのか?
果たして『フェイクスピア』は、シェイクスピアに対する、野田秀樹からのどんなオマージュなのか?
文明を形成してきた数々の「コトバ」によって、今日、我々は何処に導かれてきたのか?
そしてNODA・MAPが仕掛ける“フェイク”は、観客をどんな物語へと誘うのか?
新作『フェイクスピア』は、未だ混沌とする時代のなか、野田秀樹が改めて生の演劇の悦楽を、さらには我々が生きる現代を、鮮烈に、挑発的に描き出す、2021年最重要作品となるだろう。
Fake + Shakespeare = FAKESPEARE(フェイクスピア) !!
どうぞご期待ください!!