2007 THE BEE ロンドンバージョン
野田秀樹、初の英語での書き下ろし作品『THE BEE』が、いよいよ日本上陸! "蜂のように劇場に飛んで行くべし!" と英国メディアを魅了した『英語オリジナルバージョン』と今回、新たに誕生する『日本語バージョン』の競演がシアタートラムで実現する。 「言語」も「ジェンダー」も超越した二つの劇世界。 そこに浮かび上がるものは?! →English 2006年夏にロンドンで初演され、英国メディアと演劇ファンに絶賛された『 THE BEE 』 が、この夏、いよいよ日本の演劇ファンの前に登場します。 しかも今回は、1ヶ月余の公演期間前半に、新たに野田によって書き下ろされた「日本語バージョン」、後半に「英語オリジナルバージョン」の連続上演を敢行! もちろん野田自身が日英バージョン両方を演出し、それぞれのバージョンに異なる役で出演する・・・、という大きなミッションを自らに課してのステージです。 初演で英国人を驚愕させたスリリングなストーリー展開の原作は、筒井康隆氏が'70年代に刊行した「メタモルフォセス群島」(新潮社)に収録された短編小説 『毟りあい』。 野田は、ここに描かれた『つまらない恐怖心に支配されてゆく平凡な人間』の姿に強烈なインスピレーションを得て、これをベースに、英国の俳優たちと3年にも渡るワークショップを積み重ね、劇作家コリン・ティーバンの協力の下、英語でダイレクトに書き下ろすという初めての作業に取り組みました。 そして、その過程で、原作にはない『 BEE(蜂) 』を重要なファクターとして効果的に絡め、常に"ロジカルな解釈と言葉"を重んじる英国演劇人の特性に、野田特有のスピーディーな身体言語を投影させたオリジナリティあふれる作品を誕生させたのです。 このオリジナル英語版では、「70年代の東京に生きる日本人」を「英国人俳優」が「日本人が書いた英語」で演じる、という設定が与えられました。しかも、主役の日本人ビジネス "マン" をローレンス・オリビエ賞受賞女優:キャサリン・ハンターが演じ、「彼」に人質にとられる "脱獄犯の妻" 役を 野田 秀樹が演じるという、二重の"トランス・ジェンダー"構造が、演出プランとして絶妙に組み込まれました。 もちろん、キャサリン以外の3人の俳優たち<野田、トニー・ベル、グリン・プリチャード>が、10役近い登場人物をスピーディーに演じ分け、瞬く間に繰り広げる場面展開は、それが英語であっても、ロンドンの劇場であっても、まさしく<野田秀樹の世界>そのもの! 常々、リアルな舞台設定や表現に慣れ親しんだ英国メディアや観客は、最初はその設定のユニークさや息を飲む展開に戸惑いながらも、最後には、"絶対見るべき作品"と大きな賞賛を惜しまず、ロンドンSOHO THEATREは連日、この"類稀で珠玉のような作品"(Time out誌)を求める観衆で賑わいました。 さて、今回の番外公演では、この戯曲が本来もつ二重構造に、もうひとつ捻りを加えた新たな視点から、『THE BEE 日本バージョン』を上演することになりました。 ロンドン初演プロジェクトで前進した真の意味での国際的な共同作業と交流を、今度は日本の創作現場にフィードバックさせ、単なる英語から日本語への翻訳上演ではない、新たな日本語オリジナル作品としての『THE BEE』を、より高度な次元で結実させようというものです。 日英2方向からの入り口=2つの上演形体でありながら、ひとつの作品世界『THE BEE』の普遍性を探求、そして、そこから見えてくる様々な違和感でさえも劇世界の醍醐味として味わおう、という意図から生まれたアプローチです。 美術・照明等の舞台デザインも、もちろん、現代日本演劇界最高のスタッフによる日本版オリジナル。そして、名優キャサリン・ハンターが演じたビジネスマン・イドは、日本版では 野田 秀樹 が演じ、野田が艶やかに(?)演じた「人質にとられる脱獄犯の妻」役は、日本版では、女性の心理をリアルに演じる実力派 秋山 菜津子 が演じます。また、ダンスというカテゴリーを超えたパフォーマーとして絶大な人気を誇るコンドルズ 近藤 良平 が台詞劇に挑むという楽しみも加わり、第13回読売演劇大賞最優秀男優賞受賞で勢いに乗る 浅野 和之 が、久々に野田作品に登場する・・・という充実の俳優陣も、日本バージョンならではの大きな魅力と言えるでしょう。 日本語の特性を最大限に駆使し、身体表現も言語と同義語に確立し、独自の世界を築き上げてきた野田秀樹が、英語からダイレクトに作品世界を構築し、英語で「社会や人間心理の奥部に潜む真実」に肉迫するとき、そこには何が現出してくるのか・・・・。 そして、英語から立ち上がった"概念"を、単なる和訳ではない「野田言語」で新たに表現するとき、その世界観には何が映し出されるのか・・・。日英最高のキャスト・スタッフが東京に集結し構築する意義は計り知れません。 これまで、小空間を舞台に多くの革新的な作品を生み出してきた "NODA・MAP番外公演" 久々の復活は、野田秀樹の新たな伝説の始まりでもあります。 是非、「日本バージョン+ロンドンバージョン」ふたつの世界から、その伝説を目撃してください! お楽しみに!