ザ・ダイバー
能曲『海人』と『源氏物語』のエピソードを現代社会で起きた事件にとり込み、重層的な展開を見せる物語。犯罪者の精神分析という形をとりながら事件の核心に迫る構造はサスペンス的で、息詰まる緊張感に満ちています。2008年ロンドンバージョンは、イギリス人俳優が能楽の様式に対峙することで、かえって普遍性が際立つ逆説的な効果が生み出されました。そして今年上演される日本バージョンは、英語台本にもとづき「新作」として創造されます。演劇賞を総なめにした『THE BEE』のように、キャストのみならず演出の全てが一新され、ロンドンバージョンとは違った衝撃を観客に与えることでしょう。イギリス、英語という「他者/ 異文化」から、日本(語)という「自己/ 伝統」へ―――。日本人アーティストである自身を触媒として、野田秀樹が異なるパースペクティブから創造する2バージョン。それぞれが1本の作品として屹立する完成度をもちながら、異なるバージョンが創造されることによって、プロジェクトが完遂されるのです。 ザ・ダイバー スペシャルサイト