室町時代、京都。
後小松天皇と南朝の女<梢>の息子、幼名パカ、後の<一休>は、その出生を将軍に知られることを恐れた両親の手によって、6才にして山中に放てきされたが、旅芸人の一座に拾われ役者として育てられる。
16才、一休は、ピアニストを目指す座長の娘、<萌>への想いを残したまま、自作劇「浅茅が宿」の上演を実現するべく都へ出る。
寺を勧進元にした一休の芝居は人気になるが、舞台の出来に失望した一休は寺を出て大道芸人<ダルマ>を知り、彼に師事し「ロシアン・ルーレットの 芸」の修得に励む。
同じ頃<世阿弥陀>は将軍の庇護のもと、芸事の頂点を究めようとしていたが、ダルマの「せぬ芸」を独占しようと将軍にはたらきかけて、禁令を発布させる。
逆らったダルマは処刑される。
師をなくして失意の一休の前に、南朝の再興をもくろむ<熊楠>が現れ、「天皇の子」であると宣言し、蜂起することをけしかける。
後小松天皇と将軍義満の御前で「世阿弥陀の舞い」と「一休のロシアン・ ルーレット」
の共演が幕をあげた。
熊楠の企みを危惧した後小松天皇と梢は、我が子一休を殺そうと決意する。
引き金をひく一休。
競演に勝利したはずの世阿弥陀にも意外な結果が待っていた。帝のお抱えピアニストになった萌が将軍の新たな寵愛を得たために、見放され、佐渡へ流される。
頭を貫いた弾丸が、一休の記憶を奪った。
彷徨する一休。
再び現れた熊楠は「風に狂い芸に遊ぶ歌人」として一休を再生し、都のスターへと駆けのぼらせる。
南朝の蜂起が迫る。
折しも将軍は没し、新将軍が即位した。
戦乱の予感たちこめ、不穏な空気が都を覆うまさにその時、一休の眼前に差し出されたのは萌えが盗みだした「三種の神器」だった。
甦る記憶。
自分は「天皇の子」だったのだ。
決意を胸に最後の舞台へ向かう一休。
「天皇の子」が舞ういかなる「舞」がそこに待っているのか。